12月2日、大仙市の文化財保護課より楢岡焼浴槽が戻ってきました。

全体像はこんなです。ところどころに釉が散らされているのが洒落ています。

なんと2代目宇一制作の品です。見えにくいですが側面に「明治四十三年製 小松卯一」との銘が彫られています。(注:宇一の表記には「卯市」や「宇市」も使われています)。

こちらの浴槽、随分昔に破損してしまい、長らく破片のまま年月を経ていたのですが、文化財保護課の「ぜひ組み立てたい」との熱い申し出をいただき、ほぼ完成に近い形状を取り戻しました。2代目宇一の作品は今ではもうほとんど残っていないので、うちの窯においては作品と言うより貴重な歴史的遺物と言っても過言ではありません。
製作者にとって、かなり思い入れのあった作品のようで、縁にはこんな模様も彫られたり型押しされていたりしています。

松竹梅ですね。家族の誰かの産湯用に新調したのでしょうか?
なぜ作ったのか?
どうやって窯に入れたのか?
祖先のこととはいえ、何も伝えられていません。
内部はこんなです。埋め込まれた丸石は滑り止めの工夫でしょうか。

おそらくこの方向でこちらに背を向けて湯につかり、前半分に板を渡してフタをしていたのではないかと推測されます。

さて、この浴槽。
楢岡焼窯元にとっては価値の計り知れない貴重な品です。かといって大事にしまいこんでおいては無いも同じ。いずれどこかに展示して誰もが見られるようにしたいのですが、なにしろ大人二人がかりでも持ち上げられない重量と大きさ。簡単に展示スペースを確保することができず思案中です。
とりあえず現在は陶芸体験室の片隅に置いてあります。もし、見てみたい!という方がいらっしゃいましたら、来店の際にスタッフのお申し出下さい。ご案内いたします。