初冬というとなんだか穏やかなイメージがあるのですが、連日の不安定な天気。今日も雪です。たぶん一日中ずっと。
さて、この近年じわじわと器の修理についてのお問い合わせが増えてきました。
割れてしまった、フチが欠けてしまった、直してもらえないだろうかというご相談です。中には「フチ欠けてしまったから、ちょ〜っと粘土足してもう一回焼いてもらえないか」と言われる方も見えます。分からないでもないですが、その方法では直りません。残念ですが。
破損しても直して使いたいと言っていただけるほど気に入っていただけたり、生活に密着している様子を見ると嬉しい限りなのですが、何しろ新しい器を作り出す方が専門で、修理はまた別の分野になります。
「金継ぎ」という漆を使った作業になるので漆の塗師さんの分野です。もちろん市販の接着剤でくっつけるだけでも形は元に戻りますが、食器として破損前と同じように扱うと安全性に問題があります。その点、漆を使って金粉をのせる金継ぎは安全で見た目も美しく、耐久性もあります。ただ漆、金粉、作業工程となるとお値段もかなりのものになるので、新しく買った方が安いこともままあります。
実際、それだけの情熱と時間と財力を傾けられる器ばかりではありません。普段使いであればなおさら。そういう場合はやはり市販の接着剤かというと、そうでもなく素人向けの金継ぎの方法もあるのです。「漆」ではなく「新うるし」という名の合成塗料(原料は樹脂)を使った方法です。名前が紛らわしいなあ。ちなみに本来は釣り具の修理用品なので、釣り具屋さんに買いに行きます。
実際やってみました。素人手ですがこんな感じになります。

こちらは普段使いのご飯茶碗。自宅の台所がとり散らかった折、フライパンの柄が立ててあったまな板を倒し、それが重ねてあった食器にぶつかってご飯茶碗が転がり落ち破損。アパートの狭い台所で起きやすいピタゴラスイッチ現象です。(整理整頓がいまいちともいう)。品物としては名のある作家ものでもなく、学生の頃ルームシェアしていた友人とおそろいで購入し、以後10年以上使用しているもの。価格は300円でした。思い入れはありますがコレにプロの技の修理はなあ…。
出来上がりはプロではないのでつっこみどころもあるしガタつきもありますが、使う分には問題はないので、これまでどおり使っています。金粉をのせたので電子レンジには使えなくなりましたが。
横から見るとこんなです。

最近はエコや丁寧な生活を志す人が増えてきているので、都会では金継ぎのワークショップが開催され、結構な人気があるようですが、秋田はまだ聞かないですね。生活に活かせるワークショップが増えるといいなあ。
まあ今はネットもあるし本もあるので、挑戦してみることすらできないということはないと思います。
本では、コレ分かりやすいなあと思ったのが雑誌の暮らしの手帖。
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バックナンバーですが、特集を組んで、とても丁寧に説明されています。雪に降り込められた空き時間に、自分の手でお気に入りを修理するというのもいいかもしれません。
*ちなみに楢岡陶苑では修理は承っておりません。修理の相談に来られた方には横手の漆作家さんをご紹介しています。費用は作家さんとの御相談になります。